人気映画を生み出す、映画脚本家の共通点や特徴を紹介


映画専門の脚本家は少ないですが、彼らが日本映画作りの土台を支えています。 今回は、映画脚本家とはどんな仕事なのか、映画脚本の基本的な書き方や人気映画の脚本の共通点などについて解説していきます。

【目次】
1.映画脚本家とは
2.映画脚本の基本的な書き方
3.人気映画の脚本の共通点とは
4.映画脚本家に向いている人の特徴
5.日本で有名な映画脚本家
6.幅広い知識とさまざまな物事への好奇心と探求心が映画脚本家に必要

1. 映画脚本家とは

脚本家はシナリオライターとも呼ばれ、映画の脚本(シナリオ)を作る仕事を担当します。俳優や演出家は脚本を元に演技や演出を行っていきます。完全にオリジナルストーリーの脚本と、小説などを映像化する場合の脚本があります。どちらの場合も、観客を驚嘆・感動させる構想力が重要となります。


映画関係の専門学校に通って映画脚本家を目指す方法もありますが、演劇やテレビドラマの脚本家が映画に進出したり、映画の脚本を依頼されるケースもあります。映画の脚本家のギャラは2時間もので200〜600万円程度とされています。映画は制作費が高く、テレビドラマと比べてギャラは高くなるのですが、半年程度を要することもあるなど、拘束期間も長くなります。

2. 映画脚本の基本的な書き方

ここからは、映画脚本を描くときの基本的な書き方について、以下の流れで説明していきます。

  • 映画のテーマを考える

  • キャラクター設定

  • プロット作成

  • 映像を前提にセリフを考える

それぞれ詳しく見ていきましょう。


映画のテーマを考える

まず最初に、映画のテーマを考えます。テーマというと難しく思えるかもしれませんが、テーマは一本の軸になるようなものですから、このテーマがないと、映画全体がブレたり、何を伝えたいかわからなかったりします。まずは漠然としていても良いので、自分がどんな作品を映画でやりたいか、どんなことを映画で伝えたいかを考えてください。


「どんな映画なの?」この質問こそ勝負を握る鍵であり、これこそが映画の全てを語ります。「どんな映画なの?」にうまく答えられるかどうかに全てはかかっている。もし答えられなかったら、それで終わりなのです。そしてこの質問の答えこそが、テーマとなります。


たとえば、「恋愛ものを書きたい」と思ったら、そこからさらに掘り下げます。「辛い恋愛もの」「別れがある」「どちらかが死んでしまう」「最後には前を向く」などを連想したら、『死別する恋愛ものだが、残された人は前を向いて新しい人生を歩む映画』と決められるでしょう。また、「こんなセリフを言わせたい」というところから始まってもいいですね。核になるセリフを決めることで、物語に軸が生まれます。


キャラクター設定

次に、作品に出てくるキャラクターを大まかに決めます。ここでは名前などは決めなくても大丈夫で、そのキャラクターが背負う役割が設定されていれば問題ありません。例えば、『記者 旅ルポライターだがなぜか行く先で事件に巻き込まれる』などです。


原作ものの場合、既存のキャラクターに加えてオリジナルキャラクターを作るときにはここで作ってしまいます。


プロット作成

次に、脚本の設計図になるプロットを立てます。プロットの立て方は作家によって色々ですが、時系列やシーン割り、シーンで起こること、重要なセリフなどを積み上げて行きます。使用するツールもさまざまで、ワードなどでテキスト形式にまとめる人もいれば、エクセルなどで表でまとめる人、手書きの人などもいます。


大事なのは、実際に脚本を書き始めるとき、矛盾なく書ける指標になっているかどうかです。プロットの出来が作品の出来も左右します。自分に合った方法を見つけて、プロットを立てていってください。


映像を前提にセリフを考える

プロットが立ち、キャラも固まったら、実際に映像になるのを前提にセリフを決めていきます。脚本は文学とは異なり、あくまで映像化にあたっての素材です。そのため、映像としてどう展開されていくか想像しながら書く必要があるのです。会話によってストーリーが前に進むということと、主要登場人物の情報を明らかにしていく必要があります。


映像化することが難しいストーリーを書けばそれだけで失格とされてしまうので、実際にドラマや映画を何本も見て研究するのをおすすめします。また、プロデューサーやディレクターによる脚本の変更もつきものになるため、自分の脚本がどう映像化されるかを楽しみにできる柔軟性も必要になるでしょう。



3. 人気映画の脚本の共通点とは

ここからは、人気映画の脚本の共通点について見ていきましょう。これらの共通点を知っておくことによって、実際に自分が執筆するときにも役に立つはずです。一緒にチェックしていきましょう。


主人公に目的がある

魅力的な登場人物を作るためには、

①登場人物は強力ではっきりとした『ドラマ上の欲求』を持っていること。

②その人独自の考え方、ものの見方を持っていること。

③あるものに対する態度を体現していること。

④何かしらの変化や変身を遂げること。

この4点が必要だとされています。


特に、主人公が持っている目的が明確であることは非常に大切になります。これは、「ドラマ上の欲求」、つまり、脚本の中でその人物が手に入れたい、成し遂げたいと思っていることによって、登場人物はストーリーを通して突き動かされる。それが目的となるのです。


問題設定(対立・障害・苦悩)

良い脚本を書くために最も大切なことは、良いドラマの根本が葛藤であることを理解することです。葛藤なしにはストーリーは生まれないでしょう。そこで必要になるのが、問題設定(対立・障害・苦悩)です。


例えば、アニメ「エヴァンゲリオン」の主人公シンジの有名なセリフ。


「逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!」


まさに葛藤の境地。葛藤があると、物語に深みが増します。


旅に出て、成長し、敵を倒し、帰還する。

物語の初めと最後、同じ場所にいるけれど、同じ人間ではない。

彼は既に成長し、大人となっている。


結末から「逆算」して考えることで、どのように「葛藤」を作り出せばよいのかが明確になります。


ゴール設定(成長・変化)

クライマックスは、ドラマの中で作者が主題として提出したすべての問題が解決される部分です。主人公は生きるのか死ぬのか、成功するのか失敗するのか、勝つのか負けるのか、主人公は目的を達成できたのか、もしくはそれ以上のものを手に入れられたのか、ストーリーの答えを出し、もしくは主人公のがんばりによって、まわりがどう変化したかがしめされます。


はじまりの場所にもどったり、昔の自分と重なるような人物を見つけたり、誰かに最初と同じセリフをいわせたりして、主人公の変化を示しましょう。


もちろん、敢えて曖昧な終わり方をする映画もあります。観客にエンドを委ねるやり方です。こちらを採用する場合、前者よりも明確に「観客がなんらかの回答を得られるようなリードもしくはミスリード」を採らねばなりません。どちらにせよ、主人公や、主人公の周りがどう変わったかを見せる必要があります。



4. 映画脚本家に向いている人の特徴

映画脚本家には、適正や向き不向きはあるのでしょうか? ここでは、どんな要素が、脚本家の適性と言えるのかを以下の三つに絞ってご説明します。

  • ストーリー・構想を練るのが得意

  • 好奇心と探求心が高い

  • 長時間の執筆作業ができる

それぞれ詳しく見ていきましょう。


ストーリー・構想を練るのが得意

脚本家としての最重要能力は「物語を考えることが好き」な人です。ふとしたときにネタを考えていたり、アイデアを探していたり、物語を考えるとワクワクしたり……。そういった素質は、映画脚本家にとって非常に大切です。


ただ、仕事の世界では、好きなだけではやっていけないことも事実です。支離滅裂な話では映画にはなりませんし、あまりにありきたりな話でもヒットにはつながらないでしょう。観る人、読む人を驚かせる構想や、感動を誘うセリフ、引き込むストーリーなどを練るのが得意なら、その人は映画脚本家に向いているでしょう。


好奇心と探求心が高い

活躍する脚本家の多くは好奇心旺盛でいろんなことを勉強したり、多趣味でさまざまなジャンルにチャレンジしたりする人が多いのが特徴に挙げられます。


脚本家は、まったくなにもないところからストーリーを生み出していかねばなりません。そのため、日頃からあらゆることに対する勉強やリサーチが必要です。新聞、テレビ、趣味、過去や現在の出来事から、面白い話がインスパイアされることも多々あるためです。


経験が豊富なほうが、書ける幅や世界観構築が広まりますし、実際の経験を創作に生かすことで、よりリアリティのある脚本を書くことができます。色々なことに興味を持って調べる、好奇心旺盛な性格であることは、脚本家に向いている適性と言えるでしょう。


長時間の執筆作業ができる

脚本家は、締め切りに間に合わせるために、ひたすら書いていく作業が必要です。締切前にはホテルに何日もこもって、起きている間はひたすらに書き続ける事もあるくらい……。


そのため、長時間の執筆作業ができる、むしろ「好き」な人は、映画脚本家に向いている人と言えます。逆に、長時間机に座っていられない、集中力がなくすぐに飽きてしまうタイプなら、脚本家の仕事は難しいと言えるでしょう。



5. 日本で有名な映画脚本家

最後に、日本で有名な映画脚本家を3名紹介します。


宮藤官九郎

「クドカン」の愛称で親しまれる人気脚本家で、監督、俳優、バンドマンなど幅広く活躍している宮藤官九郎さん。「池袋ウエストゲートパーク」「タイガー&ドラゴン」「流星の絆」などヒット作を世に送り出してきました。脚本家として01年映画「GO」で第25回日本アカデミー賞最優秀脚本賞他多数の脚本賞、05年「真夜中の弥次さん喜多さん」で長編映画監督デビューし、新藤兼人賞金賞を受賞しています。


ポップでテンションの高い物語の中に、どうにもならないやるせなさや不条理が投げ込まれます。主人公はそれを解決するだけでなく、時には投げ出したり、逃げたり、決して『ヒーロー』ではない『人間』らしさがあります。


坂元裕二

19歳のとき、第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し脚本家デビュー。以降「同・級・生」(89)、「東京ラブストーリー」(91)、「二十歳の約束」(92)、「愛し君へ」「ラストクリスマス」(ともに04)、「西遊記」(06)など、フジテレビ月曜9時台の連続ドラマを数多く手がけています。映画では「世界の中心で、愛を叫ぶ」「ギミー・ヘブン」(ともに04)などの脚本に参加。土井裕泰監督作「花束みたいな恋をした」(21)で、自身初となる映画オリジナル脚本を手がけました。


日常を切り取るのが上手く、淡々と進む話の中に叙情や切なさ、ささやかな幸せなどが詰め込まれていて、観た後には大切な人に会いたくなるような作風が特徴です。


遊川和彦

テレビ制作会社ディレクターを経て、1987年『うちの子にかぎって…スペシャルⅡ』で脚本家としてデビュー。2003年、スペシャルドラマ『さとうきび畑の唄』の脚本を担当、文化庁芸術祭大賞(テレビ部門)を受賞しました。日本テレビの連続ドラマ『女王の教室』で第24回向田邦子賞。『家政婦のミタ』で2012年東京ドラマアウォード脚本賞を受賞。2017年公開の映画『恋妻家宮本』で初監督を務めています。


独創的な主人公とその家族の姿を深く描き出すことで定評のある遊川さん。社会問題にメスを入れた作風で、露悪的とも取れるストーリーと主人公の感情が見えづらい点が特徴です。



6. 幅広い知識とさまざまな物事への好奇心と探求心が映画脚本家に必要

近年「テレビ離れ」が囁かれる一方で、月額制の動画配信サービスが急成長し、自主制作映画も増えています。 仕事内容も収入も振れ幅が大きくなるので、続けていくのも難しい職業ですが、いい映画を作るためにはいい脚本が必要です。 ご興味のある方は、ぜひ好きなドラマの脚本家が誰なのか、そこからチェックしてみてもいいかもしれません。