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【アレ教えて】米内山陽子 & 杉浦理史 ~脚本作りにおいて私にマストな3つの要素~


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脚本家・放送作家マネジメント&映像制作の(株)ピタ代表、杉浦理史(すぎうらまさふみ)が、今話したい人を迎えて、気になるテーマについてトークする【アレ教えて】。


初回はピタ所属の脚本家、米内山陽子(よないやまようこ)さんに、脚本を作る際に大事にしていることを聞きました。


 

対談中のコーヒー

杉浦 「スキップとローファー」(高松美咲/講談社/2023年4月〜6月放送)の放送も終わって、ちょっと一段落したんだよね。


米内山 はい。魔法使いの嫁(ヤマザキコレ/マッグガーデン/2023年4月〜6月放送)も、1クール目が終わりました。


杉浦 やっぱり、放送を迎えて反響があると嬉しいよね。


米内山 そうですね。やっぱり、観てますって言われるのはすごく嬉しいです。


杉浦 今日は、珍しく少し時間ができた米内山を捕まえて、改めて脚本作りの話をしてみたいなと思って。今まで真面目な話なんてしてこなかったからね(笑)。


米内山 ない。ないですね(笑)。


杉浦 米内山が脚本を書く上で、大事にしていることを教えてくれるかな。


米内山

  脚本作りに大事なこと1:締め切りを守る。100%守る。 



米内山 一番大事なのは、締め切りを守ることだと思っています。


杉浦  テクニックの前に、基本中の基本だ(笑)


米内山 締め切りを守らないと、会議やれるかどうかもわからない。会議に集まっている人のためにも、きちんと締め切りは守ります。作品作りってチームワークだから、そのチームワークが私1人の遅れで崩れるのは絶対に避けたい。私だけが関わっている作品じゃないので。


杉浦 アニメで言えば絵コンテがあったり、作画があったり、色をつけたり、声を撮ったり、完成までには多くの行程があって、そういう中で言うと、脚本って最初にあるからね。


米内山 そうそう。


杉浦 脚本が押しちゃうと、後がどんどん押していくからね。時間とクオリティは比例するところがあると思うんだ。脚本作業に時間を取られて、作画に時間がかけられなかった、では申し訳なさ過ぎるよね。


米内山 そうですね。だから、締め切りを大幅に過ぎてから100点の本を出すのか、締め切りを守って80点の脚本を出すのかだったら、もう80点で出そうっていう腹の括り方はしています。それは諦めると言うことではなくて、完璧は目指すんですけれども、やっぱり得意不得意がどうしてもあるので。得意なところは、できるだけすごく良い感じにして、不得意なところに関しては、こういう方向にしたいっていう気持ちだけは見えるようにします。


その脚本チームの中にハチャメチャなギャグが得意な作家がいるんだったら、ここはこういう方向で行きたいんだけど、どうしたらいいだろうね?って、会議で相談する。すると、他の人やプロデューサーからも意見が来たりするので。とにかく、人に細々相談しながら、一人で書いているんじゃないぞって思って書くようにはしています。


杉浦 そうだよね。作家一人の脳で考えるより、多くの人のアイデアで作る方が多角的な視点のある脚本が作れそうだよね。


 

杉浦

 脚本作りに大事なこと2:絶対に俯瞰を捨てない 



杉浦 他にはどんなことがあるかな?


米内山 作品のことが絶対に好きになっちゃうんですよ。だけど、絶対に俯瞰を捨てない。好きすぎるからって全肯定しちゃうと、その作品は良くならないので。あえて、この作品の弱点、ここが弱いのかな?ここの繋がりが甘いのかな?とかを、ちゃんと見られるようにしておくっていうのは、すごく大事なことかなと思います。


杉浦 あぁ、それは確かに。好きになっちゃうと、そういうところも全部見えなくなっちゃうからね。


米内山 そう。完璧だから、何か直すところありますか?って。


杉浦 そうだよね。あれも好きでこれも好きで、っていう風に思っちゃうと、全部入れたくなっちゃうからね。


米内山 だから、ちゃんとある程度ドライな自分が、構造的に一番大事なところはここだから、ここを映えさせるために落とさなきゃいけないところがある、っていう俯瞰を捨てない。


杉浦 それってなかなか難しいけどね!「スキップとローファー」でいうと、やっぱり作品としてはすごく好きだった?


米内山 もう大好き!大好きだからこそ、アニメにしたときに、原作がすごく素敵に伝わらないんじゃないか、っていうのは嫌なんですよ。だから、あえてちょっと俯瞰で見て、こことここのつながりは少し足そうとか、この前でシーンを切ってしまおうとかを、実は細かく地味にしていて。


漫画は自分でページをめくっていくことで、自分でタイムコントロールができますよね。アニメは、強制的に時間の流れを押し付けていくようなことになるわけだから、ちょっと見せ方を工夫しないといけない。だから、漫画のままではなくて、セリフの入り方やシーンのつなぎをある程度、工夫しています。


杉浦 それはいいね。


米内山 制作会社さんも、ただのファンではなく、プロにお金払ってもらっているから。プロとしては絶対にちゃんと俯瞰して冷静に見ます。何のためのシーンなのかっていうのはちゃんと考えて書かないと。各シーンで無駄なシーンってないはずなので。


 


 脚本作りに大事なこと3:ミニスカートみたいなセリフを 



杉浦 セリフの作り方でこだわっていることはある?


米内山 セリフは、短ければ短いほど良くて。そして、短くて情報量が多い。今の時代には合わないんですけど、ミニスカートみたいなセリフを書けって昔先輩に言われて。丈は短ければ短いほど良くって。パンツは絶対見えちゃダメだけど、見えかけてるぐらいがいい。それはいつも心の片隅に置いていますね。


杉浦 ははは、それ面白いね!


米内山 パンツが核心だとして、スカートが短ければ短いほどパンツ見えそう。でも見えないみたいな、見えそうで見えないみたいなのがすごくいいと。


杉浦 ドンズバで言っちゃダメなんだ。


米内山 そうそう。この場に馴染めてなかったというのを、ドンズバに「俺は悲しい」じゃなくて、「先に帰るね」みたいなのが良い。はっきり言うより、行動する方が大事かなと思うので。セリフを言うっていうことを、気持ちを言うというよりも行動として捉えて、セリフは書くようにしています。


杉浦 なるほどね。まあいいセリフなんて書こうと思ったら、その時点でスベる気もするから。


米内山 そうそう。だから、いいセリフ書くぞ、じゃないんですよ。


杉浦 ボクは昔、映画とか観ていいセリフをメモしてたんだよ。でも見返すと、そのセリフ単体では普通なことが多くて。スラムダンクで三井が「安西先生……、バスケがしたいです」って言うけど、文字だけ見れば普通じゃない?でも、あのシチュエーションであのキャラクターがあんな表情で精一杯に言うから結果的に名セリフになっている訳だよね。いいセリフを書こうと思って書いた訳じゃなくて。


米内山 キャラクターに寄り添って、キャラクターが言いたいことを言わせたい。キャラクターに説明をさせちゃったらおしまいなので。説明させずに、キャラクターがその場にあった一番ふさわしいことを言ったらいいはず。それは、実はとっても短いはずで、確信をそのまま言葉にはしないはずだっていうことですよね。


杉浦 ボクは、ミュージカル映画を観た帰りに、そのナンバーが口ずさめたら、良いミュージカルだったと思っていて。良い映画を観た帰り道に、あのセリフ覚えているな、いいセリフだったんだな、って思うこともよくあってさ。

そう考えると、ボクもそうだけど、お客さんはいいセリフを求めている人が多い気がする。やっぱり、それもちゃんと提供できるような脚本家にならなきゃいけないな、とは思うんだよね。


米内山 そうですね。でも、本当に矛盾するようですけど、いいセリフ書こうとしたら書けないから、すごく難しいですよね。なんかもう武道の話になってくるんですか?意識しないでしろ、みたいな感じになってくるから。


 

米内山

 これからの話 



杉浦 これからは、どういう風に脚本家を頑張っていこうって考えている?


米内山 ライフワークだなと思えるようなことが、 1 個できるといいなと。

一生のうち、 1人の作家が言いたい事って片手で収まっちゃうと思うんですよね。私の言いたい事、私の表現したいことが何か、もう 1 回ちゃんと見つめ直して、それを使っていろんな作品に貢献できるようになれるといいなと。


杉浦 米内山の作家としての大目標だね。それを掲げているからこそ、目の前の仕事にも全力で取り組める気がする。


米内山 あとはチーム作り。脚本チームに各話で入ることもありますし、シリーズ構成で呼んでいただけることもあるので、脚本チームのチームワークはできるだけ良くしていこう、って思っています。杉浦さんがさっき仰ったけど、スタートなんだと思って。そこが押すとどんどん後が押すから、脚本チームは共通認識早めに持って、できるだけいい感じで、一丸で向かいたいです。


杉浦 その感じを持ってくれると本当に頼りになる(笑)。小森とか鈴森とか若手作家が米内山に憧れてるのは、その気持ちがあるからだね。

今日はありがとう!初めて真面目な話をして、新たな一面が見れた気がする。


米内山 こちらこそ。ありがとうございました!

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