top of page
  • 浅桜ひつじ

本が好きになる本 Lv.6(浅桜ひつじ)

更新日:2023年7月3日


イメージ画像

初めまして、ピタサテライトメンバーのライター、浅桜ひつじと申します。


よく「この苗字なんて読むの?」と聞かれるのですが、これでアサクラと読みます。

『涼宮ハルヒの憂鬱』朝倉涼子と、日本のバンド羊文学さんが由来です。


さて──「得体の知れない何者か」から「名前は知ってる何者か」になれたところで、本題に移りましょう。


今回のテーマは「本が好きになる本」。


皆さんは、読書はお好きですか?

私は読書大好きです。


昔はサッカー少年であった傍ら、学級図書を教室の隅っこで読んでいる文学少年でもありました。

現状皆さんが、読書が好きでも嫌いでもどっちでも大丈夫です。今日ここで大事なのは「本に興味があるか否か」だけです。


本日は私が思う「本が好きになる本」を紹介していきます!

もしあなたが「読書に興味がある──けど中々手を出せていない……」という方であれば、その一歩目を踏み出す一助になればと思います。


以下、読書挑戦の難易度順にオススメしていきますので、気になる作品を見つけた段階で是非とも離脱してください!そして読み終えた際には、そのまま次のレベルへGO!


 

午後の恐竜     著:星新一

■Lv.1『午後の恐竜』

著:星新一


皆さんは「ショートショートの神様」と呼ばれた、星新一さんをご存じでしょうか。有名作品には『ボッコちゃん』、『きまぐれロボット』等があるSF寓話作家です。


 まだ文学少年になる前の彼──ここではエヌ君としましょうか。過去の私ことエヌ君は、ある日、母が読まなくなった本棚で「星新一」という名前と出会います。


 なんだか綺麗な名前。そう思った彼はすぅっと手を伸ばすのですが、その作品は他の小説と違って薄くて、読みやすそう。


 エヌ君はそれを読んでみることにしました。本のタイトルは『午後の恐竜』。


 1977年に発売されたその本はショートショートという短編ジャンルの作品集でした。


 中でも彼がとりわけ気に入ったのが表題作である「午後の恐竜」。


 ──男が目覚めると、そこには恐竜がいた。蜃気楼? ホログラム? それとも集団幻覚? その恐竜の真実を理解した男は、そっと家族を抱きしめる──


 簡単に表すとこのような話で


、本格Sci-Fiよりも、藤子先生が言うところの「すこしふしぎ」の空気感に近いかもしれません。


 この作品に触れて、エヌ君はSF大好き少年への一歩を踏み出したわけですが、同時にこれが「本好き」の原点でもありました。


 ──そして、肝はここにあります。


 1977年の作品が、2010年の小学生の心を揺るがしたという事実。


 その「普遍性」にこそ、私は星新一作品の核を感じています。


 星新一さんのショートショートにはほとんど「固有名詞」が登場しません。晩年にも「ダイヤルを回す」という文を「電話をする」に改訂するほど、それは徹底されていました。


 時代、地域、状況、年齢、性別、国籍を問わず──受け取り手が誰かなど関係なく読むことが出来る。それが星新一のショートショートなのです。


 なぜ私がこの一冊を選んだかというと、単に私の好きなエピソードが載っていたからです。実は持ってくる作品はなんでもよかった……。


 星新一作品であれば!!


 読書が大好きな人、あんまり読まない人、苦手な人、疲れてしまう人。様々いると思いますが──。


 もしあなたがあの日のエヌ君と同じ「読書に興味がある人」であるならば、その一歩目にこの作品をお渡ししましょう。


 なにより短くてサクッと読めますし、それなのに深みがある。私は勝手に、「10分で味わえるフランス料理」と呼んでいます。


 読書は穏やかな趣味ではありますが、実は文字を読むということには割と「体力」を使います。それは、文字というのは人間が後天的に会得したものだからです。読書筋が必要。


 ですから、星新一さんのショートショート作品で、ぜひ一緒に、読書の筋トレをしてみませんか?


 
氷菓  著:米澤穂信

■Lv.2『氷菓』

著:米澤穂信


 本作は2001年に刊行され、2012年にはアニメ化もされた青春ミステリです。


 「人の死なないミステリ」として有名なこの作品は、日常の些細な謎を、少し頭が切れる普通の青年が解いていくという大人気〈古典部〉シリーズの第一作。


 以下、あらすじです。


 ──何事にも積極的には関わらない「省エネ主義」をモットーとする折木奉太郎は、姉の命令により古典部に入部させられる。さらに、そこで出会った好奇心いっぱいの少女、千反田えるの「わたし、気になります」という一言によって、あらゆる「小」事件に巻き込まれてゆく──


 私がこの作品を推す理由は2つ。


 まず、文章が易しく読みやすいこと。


 私は読書体験において、その人の「文章」が肌に合う合わないが最も重要だと思っています。


 食事にも好き嫌いやアレルギーがあるように、当然読書にもそれはあります。どれだけ栄養があっても、嫌いな食べ物を食べ続けるのは楽しい食事とは言えません。


 ですが、こと『氷菓』においては、内容はしっかりとした青春ミステリであるのに、初読者にも優しい、そして易しい文体でその物語が紡がれるのです。


 そのハードルの低さがオススメする1つ目の理由。


 そして2つ目はアニメ化されているということ──。


 読書好きの間でよくある話題に「文字を脳内で映像に起こすタイプ?」という論題があります。


 文字を読んで、その情景を頭の中で映像に組み立てられる人、なんなら、声や匂いまで付けられる人がいます。


 その人たちにとって、読書体験は映像作品を見ることに近い。受動的な側面が強く、負担が少ないのです。


 しかし、もちろんそれが苦手な人もいます。実際、小説の文章表現には限界がありますから、情景を全て描写することは不可能。ある程度は読者の想像力に依存しなければなりません。


 その作品を初読者が苦なく読めれば一番良いのですが、そこで挫折してしまったら、読書好きとしては……悲しい。


 そんな時、アニメ化しているという特大のメリットが活きてくるのです。


 アニメーションには情景はもちろん、音楽や声もついています。


 もし文章で挫折しそうになったら、一度アニメ版『氷菓』を観てみれば、次にその場面を読んだ時きっと色付いて見えることでしょう。


 これはメディアミックスの明確な強みですね。


 それって読書としては邪道かも? と思うかもしれませんが、読書というのは実はなんでもアリなのです。


 ルールがないのがルール。それが読書という趣味の懐の深さなのですから!


 本作は、手を出しづらい「ミステリ」への第一歩にもなりますし、青春を味わいたい人にはレモネード味の青春が、キャラものが好きな方には魅力的なキャラクターたちがあなたを出迎えてくれます。


 『氷菓』も分厚い作品ではないので、気になった方はぜひ、お手に取ってみてください。


 皆さんがどんな感想を抱くか──私、気になります!


 

ダ・ヴィンチ・コード 著:ダン・ブラウン 翻訳:越前敏弥

■Lv.3『ダ・ヴィンチ・コード』

著:ダン・ブラウン 翻訳:越前敏弥


 皆さんも一度はこの作品のタイトルを聞いたことがあるかもしれません。


 ええ、そうです。この小説は映画『ダ・ヴィンチ・コード』の原作です!


 他にもシリーズでは『天使と悪魔』、『インフェルノ』が映画化していますね。


 実は小説としては『天使と悪魔』の方が先に出版されたものなのですが、映画では順番が逆になっています。


 しかし、全く問題がないのがこの作品の面白いところ。


 ダン・ブラウンの描く「ロバート・ラングドンシリーズ」というのは、どこから読んでも全く問題ないのです。事件の直接的なつながりや時系列がほとんどありませんからね。


 映画ではトム・ハンクスが演じる、ハーバード大学の宗教象徴学の教授。それがロバート・ラングドンという、本作のホームズ役です。ワトソン役はなぜか毎回美女です。


 第一作『天使と悪魔』ではヴァチカンと先端科学の交錯を描きました。


 そして第二作『ダ・ヴィンチ・コード』では、隠され続けた教会の「真実」をラングドン教授が解き明か──という内容になっています。


 ここで「映画があるのにわざわざ原作?」と思ったかもしれません。もちろん内容を楽しむことにおいては、アクションも多いので映画の方が向いているでしょう。


 ですが原作には、映画では尺の都合で語り切れない宗教画、美術史おもしろエピソードが沢山あるのです。そこが文字媒体の強みです。


 そして今回私がこの「海外小説」をオススメしたのにはもう1つ理由があります。


 それはこの作品が、翻訳されたものであること。


 日本人は基本的に日本人が書いたものを読みます。ですからJapanese to Japaneseでは、多少文法や文が崩れていても大きく問題は無いのです。


 しかしそれはある程度なんでも読める人ならばのことで、その不文律が苦手な方もいます。それがいわゆる「好み」というわけです。


 そこで、翻訳された海外小説の出番。


 手近な小説と海外小説を比べてみてほしいのですが、翻訳された海外小説って、とても日本語が綺麗ではありませんか?


 もちろん、訳者の癖が強いものもあるので一概には言えませんが、その多くに綺麗な日本語が使われています。崩しのない整った文章はなにより頭に入りやすいですから、読書のハードルは低いと思います(文化の違いという別のハードルはあるものの……)。


 ちょっと宗教とか美術史とかはムズかしそう……という方には『ダレン・シャン』、『穴/HOLES』、『盗まれた記憶の博物館』等も私のイチ押しです!


 あらすじで設定や物語が面白そうと思っていただけましたら『ダ・ヴィンチ・コード』を手に取ってみてください!


 追記、『天使と悪魔』も『ダ・ヴィンチ・コード』もラストがともかくハチャメチャにめちゃくちゃ良いので、その点も加味してご紹介させていただきました……!


 

世界でいちばん透きとおった物語  著:杉井光

■Lv.4『世界でいちばん透きとおった物語』

著:杉井光


 これは最近で最も話題になった小説ではないでしょうか。Twitterの瞬間最大風速がとてつもなかった印象を持っています。


 かくいう私もそのビッグウェーブに乗って読んでみたのですが、これは「二度と読み返せない」なと思いました。もちろん良い意味で、です。


 ──そして、あらすじは言えません。


 ネットを見れば様々な意見がありますので、もしこの短い紹介だけで気になったなら、これ以上何も情報を入れず、透き通った状態でこの本を開いてみてください。


 小説が好きな人はもっと好きになり、本作を読書の入口にすれば、きっと「読書が大好き」になると、私は確信を持ってオススメいたします。


 決して難しい本では無いのですが、読書に慣れている方が有利な構造ではあるので、本記事ではLv.4とさせていただきました。


 文章自体は難しくないので、気になった方はぜひ「それ」を味わってみてください!


 

ハピネス  著:嶽本野ばら

■Lv.5『ハピネス』

著:嶽本野ばら


 純愛小説である本作は私のオールタイムベスト小説です。


 未だ私はこの作品以上に「読み返す」作品に出会ったことはありません。


 ──「私ね、後、一週間で死んじゃうの」病気の進行を知り、運命を受け入れた彼女は、残された時間を「自分らしく」生きたいと願う。主人公である「僕」は彼女の望みを叶えたいと願う──


 難病ものと呼ばれる作品は近年の人気作『君の膵臓をたべたい』や漫画『四月は君の嘘』がありますが、それでもこの作品をオススメしたいのは、本作を紡ぐ文章がトップクラスに美しいからです。


 乙女のカリスマとも呼ばれる筆者、嶽本野ばらさんの筆はとても繊細で、その登場人物の感情が、紙から文字と網膜を伝って脳髄に直接語りかけてくるような筆致で描かれる世界は、ガラスのように透明で、ガラスのように脆く儚い。


 ここまでで「読書って楽しいんだ!」と感じていただけた方には、必ず何かが届く作品として、この作品を贈りたいと思います。


 

本が好きになる本

■Lv.6『本が好きになる本』

著:浅桜ひつじ


 冗談です。私も本好きが高じて小説を書いているのですが、残念ながらまだ本は出せていません。ですからこの記事のタイトルで書影を作ってみました。


 何が言いたいのかと言うと、Lv.6まで記事を読んでくださった皆さんには、もう水先案内人など必要ないということです。その6冊目には、ぜひご自身の気になった作品をあてはめてみてください。


 本当はもっともっと紹介したいのですが、あまり皆さんのお時間を頂くわけにもいきません。それに紹介と言っても本は無限にありますし、あくまで私の趣味が入ってしまいますから。では最後に、いつかの誰かが言った、この言葉を贈りましょう。


 ──本は、どこまでも自由である。


 記事のどこかでも言いましたが、「読書」には包容力があります。


 現実が辛い人、上手くいっていない人、逃げ場がない人。そんな人に「こんな世界もあるんだよ」と、この言葉が届けばいいなと思いました。


 たとい、それがフィクションでも。それは間違いなく「世界」です。


 文字には目に見えない力が宿る。だから本は人に力を与えるのです。


 さて、インデント形式で書かれた5000文字もの記事を読み終えたそこのあなた!


 さては、あなたには「読書の才能」ってやつがありますね?


 じゃあ、やることはひとつです。本屋さんへ、レッツGOッ!


 ご紹介した本でも、他の目に付いた本でも構いません。ライトノベルでもWeb小説でも、電子書籍でも漫画でも、図鑑でも辞書でも、なんでもいいのです。


 その一行を読んだ瞬間から、あなたも地球文芸部の一員なのですから──。


 それではみなさん、またどこかでお会いしましょう。次の機会には、あなたと本の語らいを楽しめることを願って。


 ──Written by Asakura Hituji.

bottom of page